各トレーニングの趣旨
論すぺでは、論文式試験に必要な力を段階的に身につけるため、目的の異なる複数のトレーニングを用意していく予定です。
このページでは、それぞれのトレーニングが「何を身につけるためのものなのか」、その目的と学習の考え方を紹介します。
条文INDEXトレーニングとは?
論すペの条文INDEXトレーニング(基礎・実戦)は、条文を一字一句暗記するためのトレーニングではありません。
「何が、どこに書いてあるのか」をあなたの頭の中に整理し、必要な条文へすばやくアクセスするための「脳内インデックス」を作ること。
それが、このトレーニングの目的です。
基礎 ―― 法律全体の地図を作る
「基礎」では、条文の見出しや大まかな内容と条文番号を結びつけながら、各法の全体像を広く浅く把握することを目指します。
ここで大切なのは、「重要条文の番号だけ」を覚えようとしないことです。ABCなどの重要度によるランク付けをあえてせずに、原則として対象となる条文全体に取り組みます。
もちろん、すべての条文を細部まで暗記する必要はありません。すべての条文の表題さえも、常に100%の精度で思い出せる必要はないです。筆者も、さすがに査証制度の関連条文(特105条の2 - 特105条の2の10)の見出しをぜんぶ順番にスラスラ言えるかといったら、言えません(笑)。
まずは、
- 「この条文には、だいたいこんなことが書いてある」
- 「この制度に関する条文は、だいたいこの辺りに並んでいる」
……といった風に、法律全体を見渡せる「だいたいの地図」を頭の中に作ることを目指しましょう。
「条文探し問題」に強くなる
論文式試験では、ときに、普段の論文学習ではあまり意識しない条文が、問題を解く鍵になることがあります。
いわゆる「条文探し問題」――マイナー条文を根拠条文として引用させる問題です。
この種の問題は、根拠条文番号さえ出てくれば、あとは法文集からチャチャッと引用するだけですぐに処理できます。しかし、条文番号も条文のおおよその位置も分からなければ、試験中に法文集を引くのではなく「探す」ことになってしまい、致命的な時間切れアウトへと繋がります。
論文式試験に落ちる奴は……
"法文集"を"探"っちまったんだよ……
この「条文探し」問題へのもっとも有効な対策が、「条文番号INDEXを頭の中に持つこと」なのです。
さらに付け加えておくと、この条文探し問題が、いわゆる「その年の短答合格者に有利な問題」です。
短答式試験に合格した後、論文式試験の勉強を続けていると、学習対象は当然ながら「論文でよく使う重要条文」へと集中していきます。短答免除を活用している論文リベンジ勢の方であれば、さらにその傾向が顕著となるでしょう。
その年に短答式試験を突破したばかりの受験生は、直前まで広い範囲の条文を確認しています。
一方、前年以前の短答合格者は、論文学習を続ける中で知識が論文頻出条文へと偏りがちになるため、普段あまり使わないマイナー条文について突然問われると、その所在を思い出すまでに時間がかかってしまう(ことがある)わけです。
論文で頻出する条文には詳しくなった。しかし、法律全体の地図には少しずつ空白が生まれている……上に紹介した「条文探し問題」では、このような論文学習に特化しすぎた結果として生じる「知識の偏り」が、思わぬ時間のロスにつながります。
そのため「基礎」では、重要度によって条文を大きく絞ることをせず、法律全体を広く浅く確認します。これにより、論文初学者だけでなく、すでに論文学習を続けている人にとっても、論文頻出条文へ偏った知識をいったん広げ直し、法律全体の地図に生じた空白を埋めるトレーニングになります。
条文探し問題への対策として重要なのは、すべての条文を深く暗記することではありません。
「詳しくは覚えていないけれど、確かこのあたりにあったはず……!」
この感覚を持っているだけでも、法文集を引く速度は変わります。
基礎では、そのための「広く浅い条文知識」を作り、維持することも目的としています。
条文を「点」ではなく「並び」で覚える
各条文にランク付けをせず、あえて全条文を対象にすることには、もうひとつ、明確な理由があります。
法律の条文は、それぞれが無関係に並んでいるわけではありません。制度や手続の流れなど、一定の構造に従って配置されています。
たとえば11条が何の条文だったか思い出せなくても、
- 「10条はこれだった」
- 「12条はこれだった」
……と、前後の条文が分かっていれば、その間にある11条についても、条文の並びや制度の流れから大まかな内容を推測できることがあります。
つまり、条文番号の記憶は、ひとつひとつが独立した「点」ではありません。
前後の条文とつながった「流れ」として覚えることで、それぞれの記憶が互いを補完するようになります。
一方、重要度の高い条文だけを抜き出して覚えていると、この「流れ」の途中にいくつもの穴が空きます。
重要条文そのものは覚えていても、その前後に何があるのか分からない――そうなると、ひとつの条文番号を忘れたとき、周辺の知識から空白部分を類推し、補完することも難しくなります。
基礎では、すべての条文を同じ深さで覚える必要はありません。
網羅性は高く、解像度は低くてよい。
まず法律全体の並びを知ることで、個々の知識が互いに支え合う状態を作っていきます。
分からなかった条文は、実際に読もう
問題を解いていて、
「こんな条文あったっけ?」
と思ったら、解答画面からe-Govへ移動して、実際の条文を読んでみてください。
法文集を頭から順番に読むだけでは、どうしても集中力が続きにくいものです。
しかし、たった今問題として出され、自分の頭から出てこなかった条文であれば、「実際には何が書いてあるんだろう」という目的を持って読むことができます。
また、そのときには、該当する条文だけでなく、できればその前後にも目を向けてみてください。
- なぜこの位置にこの条文があるのか。
- 前後にはどのような条文が並んでいるのか。
そうした関係まで見ることで、条文番号が単なる数字ではなく、法律全体の構造の中に位置付けられていきます。
問題を解く → 分からない → 条文を読む → 前後との関係を知る → 頭の中の地図が埋まる。
この繰り返しが、条文番号INDEX[基礎]の基本的な学習サイクルです。
「試験範囲にも果てがある」と知る
広く浅く全条文に取り組むことには、もうひとつ大切な意味があります。
弁理士試験の試験範囲はかなり膨大なので、学習していると、「いったい、あとどれだけ覚えることがあるんだ……?」と、試験範囲が際限なく広がっているように感じることがあります。
しかし、実際の試験範囲は無限ではありません。
基礎トレーニングで対象となる条文を一通り経験すれば、少なくとも一度は、その全体を端から端まで見たことになります。
その時点ですべてを完璧に覚えている必要はありません。
忘れている条文があっても、苦手な条文が残っていても構いません。
大切なのは、一周したときに、「これが自分の攻略すべき範囲なのだ」と全体像を把握できることです。
それまで漠然と広がっていた膨大な試験範囲を、有限のものとして認識できるようになる。
純粋に気持ち良いですし、合格の日まで学習のモチベーションを維持する上でも有効です。
あとは、忘れたところを思い出し、分からなかったところを読み、繰り返しながら少しずつ穴を埋めていけばよくて。
「まだ知らないことが無限に出てくる」という感覚から、「有限の範囲を繰り返して攻略する」という感覚へ。
基礎を一通りコンプリートすることには、そんな意味もあります。
実戦 ―― 論文で使う条文を、正確に引き出す
「基礎」が法律全体の地図を作るトレーニングなら、「実戦」では、その地図の中でも論文式試験で特に重要な条文の解像度を上げていきます。
こちらは基礎とは異なり、対象を論文で頻繁に使用する条文に絞ります。その代わり、「何条だったか」だけではなく、必要に応じて項・号のレベルまで正確に押さえることを目指します。
「知っている条文」から「使える条文」へ
実戦で目指すのは、条文番号についての知識を増やすことだけではありません。
- 条文番号を思い出す。
- その条文が必要になる場面を理解する。
- 答案の中で実際に使う。
この3つを結びつけることが重要です。
問題文を読んだときに、「この場面なら、あの条文だ」と条文番号が反射的に浮かぶ。そして、その条文を根拠として答案を書き始めることができる。
なお、しつこいですが、ここで条文自体を丸暗記しておく必要はありません。条文を正確に引用する場合、法文集を素早く引ければ事足りますし、何より確実です。
そんな状態まで、頻出条文についての知識を深めていくのが「実戦」です。
項・号まで押さえる
論文式試験で頻繁に使用する条文については、当たり前ですが「何条か?」だけでは足りません。
ひとつの条文の中に複数の制度や要件が規定されている場合には、それぞれ何項・何号なのかまで正確に把握しておくことで、答案作成時の迷いを減らすことができるでしょう。
答案中に記載する用語も、重要なものについてはそれを答案に初めて記載するときに、たとえば「国際公開の請求(PCT21条(2)(b))」「国内公表(特184条の9第1項)」といった感じで「用語+根拠条文番号」までピシャリと書ければ、加点を狙えます。
実戦では、こうした論文頻出条文について、必要に応じて項・号のレベルまで確認します。
基礎で作った法律全体の地図の中から重要地点を選び、さらに拡大して詳しく見ていくイメージです。
論文の先の口述試験にも有効
条文を項・号まで含めて正確に引き出す力は、論文式試験だけで終わるものではありません。
論文式試験の先にある口述試験でも、条文番号INDEXは重要になります。
何しろ口述試験は各科目の制限時間がたったの10分。一方で、机の目の前には法文集が置いてあり、試験官に一言いえば参照できるわけです。
つまり、条文番号を覚えていれば、ほぼほぼ勝率100%に近い試験だということ。
もはや試験官の前で思い出すポーズを取ることすら不要。ノータイムで挙手し、あなた「自分、法文集いいっすか」、試験官「あーソレいいよ」――あとは該当箇所を読み上げるといった感じで、トントン拍子に最終合格が近づきます。(※)
※口述の設問は複数あり(各科目7~8問程度)、法文集に載っている内容がすべてではありません。なので、法文集に載っていない趣旨や青本の記載等はちゃんと覚えないとダメです。
逆に、条文番号が入っていなかったら……「アレはどこだっけ……」と法文集を探す時間だけで終了です。
その意味で条文番号INDEX[実戦]は、論文対策であると同時に、その先の口述試験へ向けた基礎作りにもなります。
「基礎」と「実戦」は、難易度による区分ではない
「基礎」と「実戦」は、「簡単な問題」と「難しい問題」を分けたものではありません。
両者では、トレーニングの目的そのものが異なります。
- 基礎は、広く浅く。
- 実戦は、狭く深く。
基礎では、重要度にかかわらず法律全体を見渡し、「何が、どこにあるのか」という脳内インデックスを作ります。
実戦では、そのインデックスの中から論文で頻繁に使う条文について、「何条の何項・何号を、どのような場面で使うのか」というところまで解像度を上げていきます。そういう意味で、実戦は既存のレジュメや暗記帳に近いです。
そのため、「基礎を終えたら、もう基礎には戻らない」という関係でもありません。
論文学習を続けていけば、頻出条文についての知識は深くなる一方で、普段使わない条文についての記憶は少しずつ薄れていきます。そんなときは、もう一度「基礎」に戻って、法律全体の地図を確認してみてください。
基礎で全体の地図を作り、実戦で重要地点を深く学び、ときどき基礎に戻って地図全体をメンテナンスする――この双方を行き来しながら、条文知識を作り、維持していくことを想定しています。
その先へ
将来的には、条文番号INDEX[実戦]についてさらに、実際にその条文が出題された過去問年度などの情報も追加していく予定です。
「この条文は重要だから覚える」というだけではなく、
- なぜ覚える必要があるのか。
- 過去にどのように問われたのか。
- 答案ではどのように使うのか。
そこまでつながる教材へ、段階的に発展させていきます。
条文番号を覚えることがゴールではない
条文INDEXトレーニングの目的は、条文番号そのものを大量に暗記することではありません。
基礎では、法律全体を一度見渡し、条文同士の位置関係を含めた「地図」を作る。
実戦では、その地図の重要地点を拡大し、実際の答案で使えるところまで知識を深める。
そして、学習を続ける中で地図に空白が生まれてきたら、再び基礎に戻って埋め直す。
最終的に目指すのは、
必要なときに、必要な条文が頭に浮かぶ。
その状態を作り、維持することです。